コンピュータと人間で作るアーキテクチャ Folksonomy(フォークソノミー)

最近、Folksonomy(フォークソノミー)という言葉をたびたび見かけるようになりました。個人的にかなりアツいトピックなので、軽くまとめておこうと思います。

Folksonomy とは folks + taxonomy からできた造語だそうです。そのままくっつけてみると「みんなの分類学」。これだとちょっとゴルフゲームっぽいのでいろんな記事を参考しつつシンプルにまとめてみると、Folksonomy とは次のような特徴をもったアーキテクチャであるといえると思います。

  • ユーザがデータに「タグ」とよばれるメタデータをつけて登録できる
  • つけた「タグ」を共有して、みんなが「タグ」を通してそれぞれのデータにアクセスできる

具体例として、この Folksonomy を用いたサービスの代表的なものに、flickr や del.icio.us などがあります。

flickr はひとことでいえば、写真の管理+共有サービスです。基本的にはユーザが撮った写真を flickr のウェブサイトにアップロードするだけなのですが、その写真に対してタグという情報(tokyo, snow など)をつけることができます。そして、みんながタグを付けてアップロードすることで、flickr という情報空間の中ではタグを通してつながりができるので、二次的な価値が出てきます。具体的には、iPod というタグを持った写真一覧を表示みたいな楽しいことが簡単にできたりするわけです。

また del.icio.us は、ブックマークの管理+共有サービスです。手軽さなどもあって、すごい勢いで普及しています。こういうソーシャルなサービスの場合、ユーザの母集団が増えれば増えるだけいい情報に辿り着ける確率も上がるので、使い方によってはかなり強力なツールになるのではないでしょうか。

この del.icio.us については Goodpic さんにとても共感できる記事があったのでちょっと引用します。

なぜソーシャル・ブックマークの del.icio.us が面白いのか

このメタタグ経由の情報入手が、今、WEB上で一番早い情報入手経路なのではないかと感じています。

感覚的に情報の速さで行くと

1位 del.icio.us
2位 ブログ
3位 メールマガジン(ITmediaとか)

多くのブロガーが、まずは del.icio.us で WEB ページやニュースをクリッピングして、その後にブログで自分の意見と一緒に書くので、当然かもしれませんが。

これは本当に実感します。僕も、ちょっと前までは気になるキーワードといえば feedback や未来検索などで追跡していたのですが、最近はスピード感と得られる情報の精度からもっぱら del.icio.us を使用して情報収集をしています。

del.icio.us のようなサービスは、ソーシャルブックマーク(SBM)とも呼ばれていて、ほかにも、Spurl や Furl 、最近でいえば、国産のはてなブックマークなどがあります。ちなみに僕は Spurl を使っています。


と、ここまで書いておいていうのもなんですが、僕ははじめてこの Folksonomy というコンセプトを知ったとき、正直そんなに目新しいものとは思いませんでした。HTML の META タグに Keywords を指定するのと何が違うのさ? ぐらいに感じていたわけです。

しかし、他の人の Folksonomy に関するエントリーを読んだり、実装されたサービス(むしろ実装が先だと思いますが)を利用したりするうちに、だんだんとそのおもしろさと可能性がわかってきました。

ザックリいってしまえば、Folksonomy のおもしろいところは以下の二点じゃないかと思います。

  • ソフトウェアのアルゴリズムで抽出できないような情報を人間が抽出してくっつけているところ
  • 写真だったりブックマークだったり、それぞれのサービスで対象をかなり絞っているところ

僕は、特に「ソフトウェアのアルゴリズムで抽出できないような情報」がポイントだと思っています。

例えば「ニューヨークの街角を歩いている若い男女」の写真を考えてみます。

これからソフトウェアの技術がますます進歩して、風景に写っている建物(のバイナリデータ)から「ニューヨーク」というロケーション情報をタグとして抽出できるようになるかもしれません。また、空の色から「夏」といった季節情報を抽出できるようになるかもしれません。

しかし、それが例えば「新婚旅行」であることは抽出できるでしょうか?

絶対できないとはいいませんが、かなり難しいでしょう。僕は一枚の写真に「新婚旅行」だとか「失恋直後」だとか、そういう人間にしかわからないようなメタデータがくっつくというところにものすごく面白み感じます。

同じように考えれば、他にもおもしろそうなサービスはいくつも浮かびますね。

すでにあるかもしれませんが、例えば音楽に Folksonomy の仕組みを適用してもおもしろいと思います。「落ち着く」「モチベーションあがる」「初めて買った」「結婚式で使った」など、そういう人間にしかわからないようなコンセプトで楽曲が検索できて、検索結果をダウンロード(購入)できるようなサービスとかはどうでしょう。

あるいは、レストランやお店、アミューズメントパークや観光地情報に、「夜景がきれい」「期待はずれ」など、感想混じりのタグが付いていてソーシャルに共有できたら便利かもしれません。いまいち。


さて、そんなメリットだらけに見える Folksonomy ですが、一方でいくつかの問題点が指摘されています。それはタグのつづり間違えや表記ゆれなど(grandmother, granma など)、タグの正当性をどうやって評価するのかという問題。そしてそもそも情報を登録するときにわざわざタグをつける労力を上まわるモチベーションをユーザからどうやって引き出すかという問題だったりします。

しかしながら、全体的に見れば Folksonomy をはじめとした「メタデータ」の利用は完全に時勢に乗っかっていて、その勢いはとどまるところを知りません。インターネット上において、次に爆発的な人気を誇るサービスはこのへんから出てくるのかもしれません。

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