カップラーメンと磁性体

「カップラーメンにヤカンでお湯を入れた後にさ、蓋を閉じるでしょ。そのときに蓋の上に何かをのっける代わりにヤカンの底を 2, 3 秒 “エイッ” って当てると蓋の糊がもう一回融けて、何ものっけなくても蓋が “ピチッ” とくっつくっていう大発見を昔知り合いから聞いたんだ。それ聞いてからさ、カップラーメンを食べるときはそのテクって欠かせないわけ。あはは。あ、すいません。生グレープフルーツサワーひとつと、えーと、何か飲む? いい? じゃあ、以上で。うん、それでさ、話は全然変わるんだけど、僕が生まれた 1977 年にフィリップ・ウォーレン・アンダーソンっていうアメリカの人がね『磁性体と無秩序系の電子構造の理論的研究』っていう研究でノーベル賞をもらったんだ。まー、僕にはなんだかよくわかんないんだけど、直流ジョゼフソン効果を観測して? うん、それを理論的にも解明したんだって。」

「へー、何かよくわかんないけどすごそう。てか、後半棒読みだったし。(笑)」

「まあ、まあ、とりあえずそれは置いといてさ(笑)、ここで、ひとつ質問なんだけど、カップラーメンと磁性体の発見って、どっちがすごいと思う?」

「うーん、すごそうなのは磁性体なんちゃらだけど、アタシはカップラーメンの方が好きかな。」

「うん、僕もそう思う。磁性体なんちゃらも、たぶん世の中の役にたってそうなんだけど、カップラーメンの方が何かいいよね。」

「あ、でも、無秩序系って言葉は好きかも。」

「あはは。確かに言われてみれば微妙にカッコイイ。奴は無秩序系の男、みたいな。(笑)」

「うん。でしょ。(笑) でも、なんで突然そんな話するの?」

「まあ、別にたいしたことじゃないんだけど、僕はカップラーメンと磁性体の真ん中くらいのことがやりたいんだなぁ、ってこと。」

「なにそれ、わけわかんないよ。あ、すいませーん、ウーロンハイひとつもらえますか?」

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