臨機応答・変問自在

ミステリィ作家の森博嗣は、名古屋大学の助教授時代、出席がわりに学生に質問をさせ、それに答えることを授業としていたそうです。本書はその質問・回答を本にしたものなのですが、これがなかなか面白い。

名古屋の学生といえどもいろいろで、賢そうなものからアホっぽいものまでいろんな質問があるのですが、いかにも著者らしい小気味の良い回答が淡々と続きます。

Q. 東京タワーの上から缶ジュースのタブを落として、地上にいる人の頭の上に当たると、その人は死ぬというのは本当ですか?
A. 嘘。ただし、人はいずれは死ぬので、命題としては真。

Q. 焦ると何故、人は考えが浮かばなくなるのでしょうか?
A. そういう状態を「焦る」と定義している。

この問答を見てるだけでも十分に面白いのですが、それだけでなく「まえがき」として著者の大学や勉強に対する考え方が書いてあり、そのへんが垣間見られたのも個人的には肥やしになりました。

ちなみに、著者の質問に対する答え方の基本的な心得は次のようなものとのこと。

  1. 情報を問う質問には、情報が存在する範囲で答え、その情報を得る方法を教えれば良い。
  2. 意見を問う質問に関しては、意見を誇張してずばり答えるか、あるいは、その意見を問う理由、意見をひとつに絞らなければならない理由、を問い返す。
  3. 人生相談、あるいは哲学的な質問に関しては、まず定義を問い返す。
  4. 個人的な質問に関しては、ある面は誇張して答え、ある面はかわす。
  5. 自分で解決しなければ意味がないことを気づかせる。

でも、この森メソッドが伝染して日常会話に混ざってしまったら、理解されず、人間関係に影響を及ぼしそうです。

Q. カノさん。仕事がつまらなくてやる気が出ないんですけど。
A. 仕事がつまらないの定義は?

つい言っちゃいそうだ。気をつけないと(笑)

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