アフターダーク

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。「風の歌を聴け」から 25 年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹書下ろし長編小説。(出版社からの内容紹介より)

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村上春樹の新作。前から楽しみにしていたので、発売日に買ってきて 2 回半くらい読んだ。

巷では、すこし作風が少し変わってきているだとか、呆気なくてツマランだとかレビューされているようだけれど、そんなのは別に関係なく、とても楽しめた。大体において、”村上春樹らしくない” なんていうのは、おのおのが勝手に作ったイメージにあっていないというだけのことなのだ。

僕が村上春樹の小説を好む大きな要因は、話の内容そのものよりというよりも登場人物たちの会話・心理描写・情景描写などを描く文体そのもの。もちろんジンワリしみてくる独特の世界観も好きだけれど、なによりも文体。

物語の舞台は明記されてないけれど、なんとなく新宿近辺な気がする。というか、新宿をイメージしながら読んでいた。渋谷でも池袋でもなく、なぜか新宿。僕は、あの話を通して作者が何を言いたかったのかを考えることは、あまり意味がないと思う。深夜から朝にかけての大都会、その一部から切り取った情景を単に眺める観察者(物語中でもそういう表現をしていたが)としての視点で追体験するのが、ひとつの楽しみ方なんじゃないかと。

それがフィクションだろうとノンフィクションだろうと、書物などの文字を通じて他人の経験をごく短時間で感じることができるのは知能が発達した人間だけに許された特権なのだから。

最近は読書量も増えてきて、随分と本を読む速度も上がってきた気もするけれど、村上春樹の文章を読んでいるときは数少ない至福のとき。熱いお風呂に入ってサッパリして、新発売の氷結果汁グリーンアップル味を飲みながら、じっくりと物語に感情移入するのだ。

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