技術経営モデルについての入門本です。とても読みやすい上に内容が濃いので、興味がある人にはかなりオススメできます。
本書の内容を簡単にまとめると、
「次世代において成功する企業は、”第三世代” の技術経営手法を確立し速やかに移行できる企業である」
といったところでしょうか。
第一世代とは、1970-1980 年における日本式の技術経営のことで、品質向上やコスト削減を徹底的におこなうという方式。当時の日本は、世界に誇るべき生産管理技術をもって、日本を世界第二位の経済大国に押し上げました。代表企業は、やはりトヨタですね。
第二世代とは、1990 年代における米国式技術経営(MOT)のことで、第一世代の技術経営が協調重視とすれば、第二世代は innovative な個人による競争重視の方式です。代表企業は、マイクロソフト、デル、オラクル、サムスンなど。
そして、次世代の企業に求められているのは、第三世代の技術経営手法を確立して速やかに移行していくこと。
本書では、デル(米)、サムスン(韓)、ハイアール(中)、トヨタ(日)、キヤノン(日)など、不況下でも高収益を続ける超優良企業の技術経営モデルを紹介し、それらから第三世代の技術経営モデルについて道筋を示しています。
僕が一番印象に残ったのは、以下の文章にあるような「技術」と「Technology」の明確な違いです。
… 問題は「技術」と訳された「Technology」である。日本人にとって、「技術」という言葉から浮かんでくるイメージは「わざ」や「すべ」で表せるように、人間の努力と経験の積み重ねから生み出される成果や価値である。
(中略)
これに対し「Technology」の概念には「Business」の概念が含まれているのである。
確かに「技術」というと「職人」的なイメージが先行します。しかも、日本的な「技術」は「Business」とは、一番遠いところにある(というか、金や事業と結びつけて考えることが悪いみたいな風潮すら感じる)ように思えます。
これらの議論をふまえた上で、筆者はあとがきで、
(日本の研究開発投資や技術力が他国に比べて “現在も” 優っている点をあげて)
こうした点からすれば、問題は研究開発投資やその結果としての技術力そのものにあるのではなく、それらを具体的な製品やサービス、事業に結びつけるマネジメントにあるといわざるをえない。この間のギャップを埋めて、持続的な高い経営成果を実現すること、これこそが「技術経営」の課題である。
と述べています。
一つの技術を限界まで突き詰めるというモデル(武士道とか?)を潜在的・歴史的に持っているという点において、僕は、日本に勝てる国はないと勝手に思っています。また、集団で協調しながらモノを作り上げるのが得意だということは第一世代型モデルで成功したことからも明らかでしょう。
要するに駒は揃っているわけです。
あとはマネジメントさえできればというところですが、僕は、敢えてそこにこだわる必要はないと考えています。どうせ国民性的に苦手なのだから、無理をしないでそれぞれの国が得意なことをすればよいと思うのです。
日本の優秀な技術者が職人芸的な技術を生み出したら、アメリカの優秀な経営者を引っ張ってきてそれを事業にしてもらう、と。ただし経営者と技術者が対等な関係にある。そういう世界になったらいいなと思います。
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