本棚付近で文庫サイズのブックカバーを探してたら、偶然発見しました。ツイてます。お正月にまとめて買ってたのをすっかり忘れてました。
司馬遼太郎の本といえばこれまで小説しか読まなかったのですが、この文庫本の中にはある意味では小説よりも心に響く文脈がたくさんありました。
膨大な歴史知識に裏打ちされた人間への深い洞察が全編にあふれていて、誇張ではなく質量のある考え方をズッシリ味わえます。そして独特な視点からの人間への深い愛情みたいなものをを強く感じました。
この第一巻は、僕の大好きな吉田松陰や大村益次郎の話がでてくるのでかなりヤッヒョーイって感じだったのですが、なによりも最高だったのは河井継乃助の話がたっぷりと出てきて司馬遼太郎の継乃助観を感じることができたところです。
日本というものをなんとかしようとは、河井継乃助は思ったことがありません。
なぜかといえば、彼には立場がある。父親は長岡藩でも勘定奉行を務めた高級官吏であり、自分は一人っ子であり、家を相続なければいけない。相続して、長岡藩をなんとかしなくてはいけないというのが、自分のスケールであると。
非常にここで悲しい思いになりますね。幕末の人材を眺めていて、どう考えても河井継乃助という者は、木戸孝允よりも三倍ほど上でした。
もし彼が薩摩に生まれているか、長州に生まれていれば、われわれのどこかのポケットに入っているお札に彼の名前が、あるいは顔が印刷されていただろうと思います。
それだけの大きな才能が、自分のことではなく、藩をなんとかしたいと思って大苦労した人間が、天下のために生きればいいのに、日本国のためにやればいいのに、そこまで河井は跳ね上がらないんですね。
僕がしつこいほど勧めている『峠』を読んだことある人なら、この悲しさが本当にわかると思います。
ドッシリしたものが読みたかったらぜひ手にとってみてください。むちゃくちゃ中身が濃いですよ。現在、第二巻に突入中。
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