■ある人が、地獄というところはどんなところなんだろうと思って、
地獄見物に出かけました。
三途の川を渡って地獄に到着。いったい、どんな恐ろしいところかと
思って身を固くします。
■ところが、そこに広がっていたのはまったく意外な、
想像もしない光景でした。
地獄は、ちょうど食事の時間だったのですが、
地獄の囚人たちがついているテーブルには、豪勢なお料理の数々が
山盛りになっているのです。
■「これはいったい、どうしたことだ」
その人は目を見張ります。
こんな豪華な食事が出てくるところがどうして地獄なんだ?
でも、囚人たちは、いまにも餓死しそうにやせ細っている…。
■その直後、ナゾはとけました。
彼らの使っているハシが、おそろしく長いのです。
まるでヤリのような長さ。向かいのテーブルの囚人に
届いてしまうようなハシでした。
■囚人たちは、そのハシで一生懸命、自分の口にごちそうを
運ぼうとしています。
しかし、当然のことながら、その食事が自分の口に入ることは
ありません。
むなしく食事の時間は終わり、また囚人たちは地獄の刑罰を
受けにいくのでした。
■次に、その人は極楽の見学に行きました。
極楽でも、さきほど見たような立派な食卓が並んでいます。
「極楽のハシは、きっと短いんだろうな」
そう思っていたら、驚くなかれ、
極楽の住人たちも、地獄で見たのと同じ長いハシを
使っているではありませんか。
■「これはいったい、どうしたことだ」
その人は目を見張ります。
しかしその直後、ナゾはとけました。
彼らは、長いハシでごちそうをつまむと、それをテーブルの
反対側の席の人に食べさせています。
その人は納得して帰っていきました。
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