「脳」整理法

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読了(2006/05/07)

ひっかかったセンテンス

一回性の出来事は、半ば規則的で、半ば偶然であるという「偶有性」に満ちています。「偶有性」こそが、私たちが一人称の生を生きる「生活知」、さらにはそこからミネルヴァのふくろうのごとく飛翔した「世界知」を生み出す「脳」整理法を駆動するエンジンです。(P34)

偶有性との行き交いの中、脳の中で体験が徐々に整理されていくプロセスは、新しいものが生み出されるプロセスとほとんど同義です。(P84)

確実に不幸になる方法はたくさんありますが、確実に幸運になることのできる方法などありません。(P95)

「行動」、「気づき」、「受容」が、「偶然を必然にする」セレンディピティを高めるために必要なのです。(P113)

偶然素敵な恋人に出会う能力と、偉大な科学的発見をする能力は、実は同じである。
まるで、一般の人々に科学を売り込むための週刊誌記事の見出しのようなフレーズです。しかしその中には人類がここまで歩んできた道のりに根ざした、深い叡智がこめられています。(P122)

脳に対する関心を、独我論に陥らせないための解毒剤として、科学ほどに強力なものはありません。科学とは、つまるところ、自分というものにとらわれずに世界を見るためのアートだからです。(P131)

科学的世界観とは、理想的には、あたかも「神の視点」に立ったかのように、自らの立場を離れて世界を見ることによって成り立っています。そのことを、科学者たちは、「ディタッチメント」(detachment)を持って対象を観察する、と表現します。
(中略)
さらに重要な点ですが、思想における議論においては、ときに、「パフォーマティブ」と呼ばれるような態度がとられることがあります。「パフォーマティブ」とは、事実もしくは真理にもとづいて自分の議論を淡々と述べるのではなく、それが論壇において、あるいは現実社会においてどのような効果を与えるのかを、あらかじめ計算して言葉を選ぶ態度を指します。
(中略)
知的な存在である人間は、日常生活の中で様々な知を運用していきます。その中には、科学に代表されるような「ディタッチメント」によって特徴づけられるような知もあれば、ある種の思想に代表されるような「パフォーマティブ」な知もあります。
ディタッチメントか、それともパフォーマティブかということは、決して二者択一の問題ではなく、私たちの生における現場の文脈いかんで、その比較優位が変わってくるはずのものです。 (P137-142)

進化論をとなえたチャールズ・ダーウィンは、自宅の庭でミミズを観察していて、今日でいう「アフォーダンス」の概念に到達しました。「アフォーダンス」を含むジェームズ・ギブソンの「生態心理学」の考え方は、あくまでも生活者の「有限の立場」に立ち、いきなり「神の視点」を据えるやり方とは一線を画します。 (P145)

人生がうまくいくかどうかは、その多くが不確実性に対する対処の方法によって決まっているといっても過言ではありません。 (P192)

成功するかどうかわからない、不確実な状況に直面したときに不安な気持ちを乗り越えてチャレンジし、それが成功するといった体験が一度でもあると、「不確実な状況下でチャレンジする」という脳のルートが強化され、そのような行動が苦労しなくても無意識のうちにとれるようになります。(P204)

感想など

途中まで、いまいち主題がビシッと見えずにモヤモヤした気分で読んでいたけど、最後まで読んだらなんとなく主題は見えたような気がする。

要するに、

世界は「偶有性」に満ちており、その「偶有性」を自分の脳でどのように処理していくかが、賢く生きていくためには重要である。

ということがいいたいのだと思った。

その偶有性との付き合い方として、セレンディピティを高めるための生き方や、「ディタッチメント」と「パフォーマティブ」みたいな、ある事象に対してとるべき態度の違いなど、脳科学的も有効な方法がいろいろありますよ、と。そんな感じじゃないかな。

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よく成功哲学の本などを読んでいると「とにかく行動」というセンテンスに出会うことが多い。本書でも同じセンテンスがあるのだが、その理由付けのアプローチが違ったので新鮮だった。

本書では、脳の主体性の範囲(本の中ではボディイメージという言葉を使っていた)で説明していた。人間は行動しないと(外部との接触範囲を広げないと)自分がどこまでコントロールできるかがわからない。いいかえると、どこまでが自分の影響範囲だかわからない。行動してはじめて自分の影響範囲が脳の中で整理される。だから行動して脳の中に影響範囲を整理した方が良いという理屈。

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