「絵画を観察するように世界を見る技法」というサブタイトルに興味をひかれて読みました。
以下、読書メモです。
読書メモ
人間の知的生産には「知覚→思考→実行」という3つのステージがある。
ステージ1 「知覚」 … 人や資料などからの情報を選択し、解釈し、問題設定をする
ステージ2 「思考」 … 問題解決や意思決定といった一定のタスクを目的として、必要に応じて推論・分析的・論理的・クリティカル・クリエイティブ思考などを稼働させながら考える
ステージ3 「実行」 … アイディアを組織化し、コミュニケーションやパフォーマンスを行う
ここで「知覚」は最上流なので、ここが貧弱だとその先の「思考」や「行動」が良いものになるはずがない。
とにかく「知覚」重要!
では、知覚の質を上げるためにはどうしたらいいか?
知識を増やすとか他者の知覚を取り入れるとかもあるけど、なにより大事なのは「観察」。とにかく目の前の(目に見えないものも)対象をよく観ることが大切。
私たちの眼は検索モードになっている。知覚的盲目。情報が多すぎて必然的に多くの情報を捨て、目的を持って(検索的に)ものをみる習慣ができてしまっている。CTの映像にうっすら映っているゴリラの絵に医者も気づかない。
「目的なく見る力」つまり、目の前の対象を「純粋によく見る」ことが特に重要になってきている。
この「純粋によく見る」= 「観察する」力を養うために絵画をゆっくり見ることが非常に効果的。これはハーバード大をはじめ多くのトップ大学で取り入れられているトレーニング。
このトレーニングに絵画が最適な理由は、
1. バイアスが介在しづらい
2. フレームで区切られている
3. 全体を見渡す力がつく
トレーニングのやり方。
1. 十分な観察時間を取る(自主トレの場合15分間。絵に描かれた内容を理解するのにかかる時間は4分8秒といわれている)
2. 多くの解釈を生む目の付けどころを見る(ホームズの例)
3. 知覚をゆがめる要素の排除(154の認知バイアス。カテゴリバイアス・確証バイアス・同調バイアス・自信過剰バイアス・ネガティビティバイアス・曖昧性バイアス・バイアスの盲点など)
どういうふうに見ればいいか?
技術1 … 全体図を観る(眼の動きを絵全体に配る)
技術2 … 組織的に観る(フォーカルポイントを中心としてまとまりで全体を観る)
技術3 … 周縁部を観る(ブラインドスポット)
技術4 … 関連付けて観る(アナロジー。絵に描かれていないことも人間は経験と関連付けて見る。)
感想
現代人は、世の中の情報を目的を持ってみることに慣れすぎているので、目的なく、純粋に見る力が衰えているという話はとても刺激的でおもしろかった。
だから、目の前の対象(または目に見えない対象)をちゃんと観察して、そっからバイアスにとらわれない純粋な情報を受容し、すでに持っている多様な知識や視点と組み合わせて、そこから解釈が自動的に進み、結果、よい思考・行動へ至るよ!という話ですね。そのために絵画を純粋に見るトレーニングをしましょう、と。
僕が毎日美術クイズを投稿しているのも、実はこのトレーニングのためだったりします。15分はかなり努力を要するので、5分くらいしか見てませんけど。
その他にもAppleの話など、アートがどのように実践的に使われているかの事例も豊富でおもしろかったので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
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