「ねえ、父さんもうちに来れば?」
「ワ、ワタル。いま、何て?」
「父さんもうちに来てみんなで一緒に暮らそう、って言ったんだよ。」
「ワタル…。こ、こんな俺のことを父と呼んでくれるのか?」
「なにいってんだよ。俺にとって父さんは世界中であんた一人だけだよ。」
という、誰しもが一生のうち一度は体験してみたいシチュエーションなわけですが、ちゃんと考えてみると、このシチュエーションを狙って体験するためには気の遠くなるような根気と入念な計画が必要だと思いました。
必要条件をあげてみます。
- 最低でも25年間くらい生き別れていること
- 自分自身はかなり駄目っぽい人間であること
- 子供のほうは幸せな人生を送ること
- 子供のほうから自分のことを捜させること
- 再開してからしばらくは「あんた」と呼ばせること
思ったよりたくさんの条件がありそうです。
特に、「子供のほうから捜させる」というのが一番難しいポイントだと思います。これを達成するためには、子供との幼い頃の楽しい思い出作りをしっかりやっておくことと、大きくなったときに父親を捜そうと思える心の余裕を育んであげる必要があるでしょう。
さて、27歳・独身の僕がこのシチュエーションを本気で味わいたければ、最短でも以下のようなステップを踏まなければならず、どうやら最短でも57歳になりそうです。
- とりあえず、結婚する。(28歳)
- 子供をもうける。ワタルと名付ける。(29歳)
- ワタルが3歳になるまでは幸せな家族を演じる。(31歳)
- ワタルが3歳になったら、いっぱい遊んだり旅行に行ったりして楽しい思い出を植えつける。このとき肩車をしている写真をいっぱい撮っておく。時間が経って写真が色褪せるように銀塩カメラでの撮影がベスト。(31歳)
- 思い出が十分に植えつけ終わったら、突如、酒とギャンブルにおぼれて奥さんに暴力をふるう。(32歳)
- 満を持して、離婚。(33歳)
- 25年間姿をくらます。職業は日雇いの工事現場とかがベスト(出世厳禁)。このとき、のちにワタルが自分を捜しやすいように消息を辿れるようにしておくのを忘れないこと。また、子供が幸せな人生を送れるように、必要であれば経済的援助も惜しんではいけない。(幸せな人生を歩んでいなければわざわざ父を捜そうという余裕は生まれないため) (33~57歳)
- ワタルが探しに来る。そのとき「あんた」と呼んでもらうために、卑屈になったりダメなところを見せたりして、うまく見下されるように振る舞う。(57歳)
- 父さん!(表情や会話は慎重に。何度もリハーサルすること。)
ここまでくると、すでに人生を賭けたライフワーク感がありますが、これほどレアなシチュエーションを味わうためならば致し方ないでしょう。僕にはちょっと無理そうですが。興味がある人は参考にしてみてください。
今日は子供の日ということで、子供にまつわるエントリーで。
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