数日前、僕の横に若い妊娠中の女性がすわった。
僕とその女性の距離は約15cm。
後で気づいたのだけど、そのときが人生で僕が一番妊婦に(距離的に)近かった時間だったように思う。だからこそ、そのときの僕は妙にびくびくして、聞いている英語のボリュームを下げてみたり(おなかの赤ちゃんに悪いかなと思った)、電車が急ブレーキかけたときとかぶつからないように気をつけないといけないなとか、たぶん意識する必要もないような余計なことをいろいろ考えていたのだろう。
その女性はずっと、その手をおなかの上に添えて何ともいえないような表情をしていた。おなかの生命が愛しくてしかたないといわんばかりの慈しむような表情。その表情は控えめに表現しても最高に美しかったし、そんな表情に喚起されてか、僕まで世界中の存在をすべて大切にしたいというような気持ちになった。
家に着くと、何かしたかった僕はとりあえず観葉植物に水をあげた。
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