9日間もあったはずの夏休みもあと残すところ2日になってしまった。
今回の夏休みは、暑すぎたり台風がきたりで引きこもってることが多かった。
まったく何もしなかったとまではいわないけど、なんとなくもうひとつくらいイベントが欲しいところ。
そういうときは芸術に頼ろう。
いま気になっているのは、神護寺展(東京国立博物館)とデ・キリコ展(東京都美術館)のふたつ。
デ・キリコ展のほうが少し早く終わってしまうみたいなので、今回はデ・キリコ展することにした。
気になってるといっても、僕のキリコ知識といえば、シュルレアリスムの画家ということ、あとは有名な以下の絵くらいしか印象になかった。
あ、それといま突然思い出したけど、ギャラリーフェイクでキリコが大好きなアーティストの話があった気がする。(調べたらその話は4巻にあるらしい)
まあ、いずれにしてもその程度の非常に薄っぺらい理解しかなかった。
今回のデ・キリコ展は日本では10年ぶりの大規模な回顧展らしく、100点以上もの作品が世界各地から集められ、彼の約70年にわたる芸術と人生を総合的に振り返る貴重な機会とのこと。
展覧会の構成:デ・キリコの芸術的変遷
本展は、デ・キリコの芸術的変遷を5つのセクションに分けて紹介している。各セクションは彼の人生の重要な転換点と芸術的発展とリンクしており、全体像を把握する上でとても効果的な構成となっている。
SECTION 1: 自画像・肖像画
デ・キリコの芸術の変遷は自己探求から始まった。本展では、彼が生涯を通じて描き続けた自画像や肖像画を展示している。例えば、《自画像》(1922年頃、トレド美術館蔵)は、キリコの内面的な探求を示す重要な作品だそうだ。
SECTION 2: 形而上絵画
デ・キリコの代名詞ともいえる「形而上絵画」のセクションは、本展の中核を成している。特筆すべきは、サルバドール・ダリやルネ・マグリットに多大な影響を与えた1910年代の作品が多数展示されていることだ。
2-1 イタリア広場:《バラ色の塔のあるイタリア広場》(1934年頃、トレント・エ・ロヴェレート近現代美術館)など、デ・キリコの記憶と想像が融合した独特の風景画を展示。
2-2 形而上的室内:《燃えつきた太陽のある形而上的室内》(1971年、ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団)など、彼の内面世界を反映した謎めいた室内空間の作品群。
2-3 マヌカン:人間性の本質を探求する無機質な人形たちを描いた作品。
そのほかの注目作品として、《予言者》(1914-15年、ニューヨーク近代美術館蔵)、《形而上的なミューズたち》(1918年、カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館蔵)、《福音書的な静物Ⅰ》(1916年、大阪中之島美術館蔵)などがあげられる。これらの作品は世界中に散らばっており、一堂に会して鑑賞できる機会はとても貴重だ。
SECTION 3: 1920年代の展開
第一次世界大戦後、デ・キリコはイタリアに戻り、古典への関心を深めていく。この時期、彼は形而上絵画のスタイルを維持しつつ、より伝統的な技法も取り入れ始める。
SECTION 4: 伝統的な絵画への回帰 ―「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ
1919年以降、デ・キリコは古典絵画の技法に強い興味を示す。この「秩序への回帰」は、彼の芸術観の成熟を示すと同時に、当時のアバンギャルド芸術界との軋轢を生む原因ともなった。
SECTION 5: 新形而上絵画
晩年、デ・キリコは初期の形而上絵画のモチーフに立ち返りつつ、新たな解釈を加えた「新形而上絵画」を制作する。90歳で亡くなるまで創作を続けた彼の姿勢は、芸術家としての真摯な探求心を体現している。
デ・キリコの多彩な創作活動
本展では、絵画だけでなく、デ・キリコが手掛けた彫刻や挿絵、さらには舞台衣装のデザインなども展示されている。これにより、「形而上絵画」の画家としてのイメージを超えた、デ・キリコの多彩な創作活動の全容を知ることができる。
展覧会を通じて感じたこと
デ・キリコの生涯を辿ることで、彼の芸術がいかに彼の人生経験と密接に結びついていたかを実感した。ギリシャ、イタリア、ドイツ、フランスと、様々な文化に触れた経験が、彼の独特な芸術観を形成したのだろう。
特に印象的だったのは、デ・キリコが生涯を通じて自身の芸術を進化させ続けたことだ。一度評価を得た形而上絵画のスタイルに安住せず、常に新たな表現を模索し続けた姿勢には心打たれるものがある。
また、その膨大な作品量には圧倒された。90歳で亡くなる直前まで創作を続けたという事実は、芸術家としての彼の情熱と献身を如実に物語っている。
もっと時間をかけて堪能したいなと思って、帰りに図録を購入した。
GeoGuessrプレーヤーとしては、彼にゆかりのある場所をGoogleストリートビューで確認しつつ、想像(妄想)をひろげてキリコの世界観に一度どっぷり浸りたい。
おまけ
山田五郎のオトナの教養講座でも(おそらく著作権の関係で)期間限定で解説されているので、まずはこちらから見るとより理解できるかもしれない。
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