ヘコみ日 その 1

九時起床。今からシャワーを浴びると出勤時間の九時半には間に合わないと思ったけど、かまわずシャワーを浴びた。なんやかんやで研究室についたのは九時四十分。凄まじく暑いが我慢しながら白衣を着て、実験室のほうへ行き、昨日やり残した大量の洗い物をした。特にカラムで使った 50ml マイヤー(三角フラスコ)が二十個もあってうざかった。結局一時間ほどかかって洗い物終了。一息ついてたら実験室の電話が鳴った。俺の席は電話のすぐ近くなので、暗黙の了解で俺が電話番。

「はい、○○研究室です。」
「あ、カノ? 君と実験のことでディスカッションするから話すことを頭の中で整理しておいてね。」
「はい、わかりました。で、何時ごろ伺えばよいでしょうか?」
「えーと、十一時半ころ来てね。」
「はい、わかりました。」

いつものように用件のみの会話。
ついに来たかという感じ。あせって昨日の夜にカラムをかけて分けたトシル化の反応の NMR チャートの解析をした。三本手の水酸基をすべてトシル化したかったのだが、二本だけトシル化されたものと一本だけのものしかできてなかった。やはり加水分解しちゃうのか。でもピリジン使いたくないしなー、とか思ってたらお約束の時間の五分前。自転車を飛ばして教授室へ向かった。

「さあ、説明して。」
「あ、ホワイトボード使っていいですか?」
「別にいいよ。どうぞ。」
「えっと、最終セミナーで報告したのはここまでで・・・」

みたいな感じでディスカッションは進んだ。この十日間は二十くらい実験をしていたので、いつものような文句は言われなかった。しかし、どうもメチレン保護したのが気に入らないらしく、保護基の本を見ながらぶつくさ言いながら、やっぱりイソプロピリデン保護のほうがいいね、といいだした。前にアセトンを用いてイソプロピリデン保護の実験を何度か試したがうまくいかなかったし、もしイソプロピリデン保護したいなら 2,2 – ジメトキシプロパンがないと無理だ、と伝えると、買っていいよ、とおっしゃられた。前にその話をしたときは、試薬を買うのもなんだから研究室にある試薬でやれって言ったじゃん、ていうか、せっかく苦労して合成したメチレン保護のほうはどうするの?と思いつつ、はぁ、とかいってたら、ほらお盆休みに入っちゃうから早く注文して、とおっしゃった。十日間があっさりと無駄になったので、かなりへこみつつ実験室に戻り、試薬を注文した。

なんだか一気にやる気が失せて、図書館で文献を調べることにしつつ、漫画喫茶にいって文献(ゴルゴ 13)を三時間ほど読んでから、車を飛ばして霞ヶ浦を見ながら30分くらいたそがれてた。

夕食の時間になったので研究室に戻り、H さんと N 君と M と一緒にマックに行って、バリューセット(フィレオフィッシュ)を食べた。研究室に戻っても、やる気が戻ってこなかったので、やっつけカラムを一本かけてから十一時ごろ研究室を出た。帰りにビックベン(レンタルビデオ・ CD 屋)でビデオを三本借り、ローソンでジュースとお菓子を買って、家に戻った。ハムスターに餌をやってから、今日のことを忘れるために、二本立て続けに映画を見た。すこし気分が戻った。人生にそんな深刻なことなどないのだ。

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