小津安二郎の『東京物語』という映画を観た。
もう圧巻だった。昔の映画はどうせ退屈だろうっていう安易な考えから、小津安二郎とか黒澤明などのいわゆる名作を観ていなかったのだけど、考えを改めないといけないなって本当に思った。以下は、僕に強い印象を残していったところ。
- 周吉(笠智衆)・とみ(東山千栄子)夫婦のこの上ない柔和な態度。にもかかわらず、立ち上がってくるどうしようもない寂しさ。これは、神の眼を持っている観客だからなのか、それとも彼らがテクニカルに寂しさを立ち上げるような演技をしているからなのか。
- 紀子(原節子)は最初からとてもいい人なんだけど、僕はずっとなんだか信用できなかった。映画の最後で紀子が周吉に自分の内面を吐露するシーンがあるのだけれど、それを映画の最初からずっと感じていたからだと思う。それを演技で表しているとしたら本当にすごいこと。
- 尾道の美しさは反則的。1年以内に行く。
- 熱海の旅館での(50年前の)若者の騒ぎ方が、今と全く変わらない。むしろ今より面白そうに見えた。
- カメラの構図が終始固定なのが、逆に新鮮だった。
- 幸一の息子の「おもしろくないやい」っていうかわいい罵声を真似したくなった。
観た後にいろいろ調べてたら、茂木さんのブログに僕には感じられなかった視点が紹介されていて、そういう見方もあるのかと、さらに強烈な衝撃を受けた。
神の眼、監督の眼、観客の眼を
持たぬ息子、娘たちは、穏やかな
父親の内面に「こまい町医者でさあ」
というような鋭い批評があるなどとは
夢にも思わず、永久の別れを
告げるのだろう。
聖なるふるまい – 茂木健一郎 クオリア日記
神の眼を持っている観客だからこそ登場人物すべての心の機微が感じ取れるけれど、実際には、ひとは自分に見えてるところでしか相手を判断することができない。たとえ常に柔和な態度の父親でも心に鋭い批評を持っている。そういったどうしようもない現実を再認識させられた。
これがたったの1000円って 安すぎ。『晩春』とか『お茶漬の味』とか他のも観てみることにしよう。
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